もちの旅コラム VOL.10
【 中国 昆明編 】
「TBL」のコラムではみんな各々のテーマをもって発信しています。
私モチの担当は「旅」をテーマにしたコラム。今回は中国の旅の記録をお届けさせていただきます!
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昨年、仕事で中国の雲南省にある昆明(こんめい)を訪れました。
昆明市は常春の街。常に気候がよく、花と緑にあふれています。
昆明への訪問は、「藍染製品」の開発のためでした。昆明は藍染が有名な街なのですが、昆明の藍染は、実は日本から伝わったものです。日本の有名なとある工房が昆明までその技術を伝えに来ました。
勤勉な中国人は熱心に藍染を学んだそうです。藍染の、特に絞り染めの染色工程は気の遠くなるような緻密で繊細な作業の繰り返しです。染色工程では20回近く、生地を浸して乾燥させて・・・を繰り返す途方もない作業なのです。
人件費が最も高い割合を占める藍染にとって、中国の安価な人件費は日本企業にとっても魅力的でした。
日本企業はその価格の安さに目をつけ、日本から伝わった藍染は、昆明から再び製品として日本へ輸入されるようになります。
ところが、日本に輸入された藍染は、凄まじい勢いでその価値を消費し尽くされてしまいました。藍染人気に便乗したメーカーや小売店が次第に価格競争を激化させ、藍染製品の価格はみるみるうちに低下し、ついには100円均一ショップにまで藍染製品が並んでしまったそうです。手作りのぬくもりがあり、その一つひとつが手作業ならではの個体差のある表情に、人々は価値を見出していたはずです。ところが強烈な価格競争の土俵に上げられた挙げ句、その価値は一瞬にして人々の間で陳腐なものとなり、100円均一ショップにまで並ぶようになり、ほどなくして藍染は日本から姿を消してしまったということです。
一時期は盛り上がった昆明市の藍染産業はこうして廃れてしまい、現在、藍染めはもはや商業製品としてではなく、アカデミックな意味合いを強めて大学の授業や小さな工房などで細々と続いている状況です。
商売のためとはいえ、本当に良い物の価値をここまで下げてしまった日本の小売市場の闇を感じますよね。
正しく製品の価値を伝えることもお店の役目なんだなと、このお話を伺った時に強く思いました。
そんな藍染を再び製品化しようとすると、なかなか一筋縄ではいきません。
10年前に比べれば、中国の人件費は大幅に上がってきていますし、製品化できる工房も限られているからです。
また、藍染の本場である日本でも藍染はできるのですが、製品価格がさらに高額になってしまうため、何とか昆明で実現したいと考えました。
そして今回、試行錯誤を重ねた結果、ようやく製品化までこぎつけることができました。
今回は藍染生地を使ったカーテンの販売開始に先駆けて、昆明の旅を通じて感じた藍染の素晴らしさをご紹介させていただきたいと思います。
藍染の染料は「すくも」という植物からできています。草木染めの一種で、一切化学染料を使用しません。
1度浸しただけでは美しいインディゴブルーにはならず、20回以上、浸しては空気に触れさせて乾燥させ、また浸して・・・という作業を繰り返し、藍色が幾重にも重なって深い青を実現します。
何度も浸す工程だけでも何日もかかるのですが、こちらの工房では染める以前の「絞り」の作業が非常に細かい作業の連続でした。
そしてここから、どれだけ深い青にするか、計算しながら染色作業を繰り返していきます。
グラデーションにするためには、途中から浸すところを少なくしていったりして青に濃淡をつけることで調整します。
乾燥させて、この結び目を解くと、たちまち素晴らしい藍染デザインが出現します。
いかがでしょうか。
気の遠くなるような繊細で緻密な作業が何十工程も重なって一枚の藍染が仕上がるんですね。
すべてが植物と人の手でできた染め物の良さは、何とも言えない有り難みがにじみ出ています。
その生地が窓辺でカーテンになり、光や風を受けてたなびいたり透けたりする様子はなんとも言えない感慨深いものがありますよね。
光に透かすとまた違った表情を見せる藍染。窓辺を手作りのぬくもりと伝統の重みで彩ります。
藍染カーテンの販売は間もなく開始致します。
遠い昆明の街で日本が伝えた伝統文化をひっそりと守る人々が心を込めて作った藍染生地。
どうか楽しみにお待ちくださいませ。
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